先日、埼玉県福祉協議会のご依頼で「高齢者の看取り研修」を実施いたしました。この研修には、埼玉県内の施設に勤務する高齢者と関わる職種の方々108名が参加され、充実した3時間半を共に過ごしました。高齢者の看取りケアにおいて重要なことは、病院と施設の役割の違いを理解し、心身の機能が低下した高齢者が家族との時間を心豊かに過ごせるよう寄り添うことです。今回の研修では、オリジナルストーリーを用いた体験型ワークショップ「いっぺん死んでみるWS施設編」や、「いーとかーど」を使ったゲームを通じて、実際の看取りケアで良いケアを提供するための知識と技術を学びました。参加者からは「今まで受けたことのない研修だった」「これからも家族、利用者様に寄り添えるようにもっと話をたくさん聞きたい」「自分の死について考えたことがなかった。涙が止まらなかった」との感想をいただき、研修の意図がしっかりと伝わったことを実感しています。以下では、研修の詳細と受講生の声を紹介いたします。
高齢者の看取り研修の内容と意図
病院と施設の役割の違い
高齢者の看取りケアにおいて、病院と施設の役割には大きな違いがあります。病院では主に医療的なケアが中心となり、急性期の治療や緊急対応が求められます。一方、施設では日常生活の延長としてのケアが重要視されます。ここでは、高齢者が自宅のようにくつろげる環境を提供し、家族との時間を大切にすることが求められます。特に、最期の時間を心豊かに過ごせるようにするためには、心のケアが欠かせません。研修では、このような役割の違いがあることをストーリーの背景に入れながらより主人公として没入しやすい構成を意識しました。
オリジナルストーリーを用いた体験型いっぺん死んでみるワークショップ
研修の目玉となったのは、いっぺん死んでみるストーリーを「施設編」として現在日本人の死亡原因男性1位、女性2位の肺がんを元に作成した体験型のワークショップ「いっぺん死んでみるWS施設編」でした。参加者は、物語の中で死に逝く立場に立ち、主人公がどのような思いで最期の時を迎えるのかを自ら体感しました。この体験を通じて、参加者は自身のケアの在り方を考え、より寄り添った看取りケアを実現するための新たな視点を得ることができました。また、このワークショップは、現在の日本の医療を意識した内容であり、制度を取り入れています。このストーリーを行うことで参加者の実務に直接役立つ明日からできることを発見することができました。(施設編、在宅編、死なない編をご希望にて行っています)
受講生の声と今後の展望
感動と気づきの瞬間
今回の研修依頼をいただいた時に、講義型の知識の研修もできるけど、それは私でなくてもできることです。今後、団塊の世代が後期高齢者となり、急激に増えていく看取りが在宅施設で増えていくことが予測される中、それぞれの人生の数と同じ数の死があるのに、今から講義方式でHOW TOを学んでいても追いつかないと思います。経験がHOW TOを教えてくれるので、大切なのはケアスタッフが看取りを怖がらずに関わっていく心構え(BE)を作っていくことです。それが良い看取りにつながります。そして誰も、今語れる人の中には実際に死んだことがある人はいないので、看取りを学ぶということは想像力と共感力を鍛えるということです。研修後にいただいた感想の中で、多くの受講生が「今まで受けたことのない研修だった」と述べていました。特に、自分の死について考える機会が少ない中で、涙を流しながら自身の人生を振り返る参加者も多く見受けられました。ある参加者は「自分自身の死について考えたことで、家族や利用者様に対する接し方が変わった」と述べており、看取りケアの重要性を再認識する貴重な機会となりました。このように、参加者一人一人が深い気づきを得ることで、日常のケアに対する意識も大きく変化したようです。
研修の影響と次のステップ
実際いただいたご感想からも、受講生の皆様が日常のケアに活かすことができると確信しています。また、この研修をきっかけに、看取りケアの質をさらに向上させるための新しいアイデアや取り組みが生まれることを期待しています。ある受講生は、「研修で学んだことを職場に持ち帰り、チームで共有したい」と話しており、看取りケアの向上に向けた具体的なアクションが既に始まっています。今後も、より多くの人々にこの研修を提供し、看取りケアの大切さを広めていきたいと思います。ご感想は沢山頂いたので、別記事でご紹介いたします。