在宅介護を支える多職種連携の重要性
在宅介護はチームで支える時代
在宅介護では、ご本人やご家族が安心して暮らせる環境を整えることが大切です。しかし、一つの職種だけで全てを支えるのは難しく、多職種が連携することで質の高い介護が実現します。介護職、看護師、ケアマネジャー、デイサービス、デイケア施設、主治医、リハビリ職など、それぞれの専門性を活かしながら協力することが欠かせません。
在宅介護では、医療面、生活面、精神面など、さまざまな側面から支援が必要です。そのため、各分野の専門家が協力し、利用者の生活を支えていくことが求められます。特に、情報共有と円滑なコミュニケーションが、スムーズな連携の鍵となります。
多職種連携がもたらすメリットと現状の問題
1. 介護サービスの質の向上
それぞれの専門職が連携することで、必要なケアを適切なタイミングで提供できます。例えば、訪問看護師とリハビリ職が協力することで、日常生活動作(ADL)の維持・向上が期待できます。デイサービスやデイケアを活用することで、社会参加の機会を増やし、認知症の予防や進行の遅延にもつながります。それぞれの特色を活かすことで質の高いケアの提供につながります。しかし連携が取れていないところや、サービスの抱え込みがある場合、結果利用者さんにとってベストなケアが行われているのか疑問に思う現実も目にします。例えば看護師が介護サービスを行うことで人手が足りなくなり、必要な人への医療提供ができない。例えばデイサービスばかりを利用することで家の中のサービスや状況把握ができないなどのデメリットが出てくることを想像すると、適切な職が適切なサービスを行うことは日本の介護を持続可能にするという大きなメリットをもたらすことができます。
2. 家族の介護負担軽減
多職種のサポートを受けることで、家族の介護負担が軽減されます。ケアマネジャーが家族の状況を把握し、適切なサービスを提案することで、無理なく介護を続けられる環境が整います。介護者が一人で抱え込まずに済むことで、心身の負担も軽減され、家族全体の生活の質も向上します。ゆとりのあるマインドで介護の望むと感謝の気持ちがお互いに感じられます。子育ての時、ワンオペで家庭内が不和になった記憶ありませんか?
3. 医療と介護のスムーズな連携
主治医や看護師、介護職が情報共有を行うことで、健康状態の変化に素早く対応できます。例えば、持病のある方が体調を崩した際に、医療と看護と介護が連携することで迅速な対応が可能になります。定期的なカンファレンスを実施するのが難しい現状、誰がそれぞれの情報をどのように伝えるのかで情報の伝わり方が違います。特に家庭の中を見る機会のない主治医に体調以外の現状の介護の状態や家庭環境を伝えて想像してもらい、治療に役立てるにはコミュニケーション能力が求められます。これには、アドラー心理学を取り入れた会話で学ぶコミュニケーションスキルアップ講座がおすすめです。
具体的な連携の方法
1. 定期的なカンファレンスの実施
多職種間で定期的に会議を開き、利用者の状況を共有することで、より適切な支援が可能になります。これが本来より良い支援の方法なのですが、難しい現実としてカンファレンスを行うことでどの部署にも保険点数(収入)が入らないのが現状。その分仕事が止まってしまうと収入がなくなるので、費用対効果が組織になく医者や看護師、リハビリの参加が課題です。オンライン会議が可能になったコロナ以降も周りでは一度も開催されたことはありませんし、もともと28年以上在宅介護に従事して担当者会議に主治医や主治医の施設スタッフが参加した事がある経験は片手程度しかありません。
せめて時給が捻出できるような保険診療点数が加算されると有意義な多職種による話し合いができると思います。
2. ICTを活用した情報共有
カンファレンスが難しいという状況の今の現状は連絡帳や専用のアプリを利用することで、リアルタイムで情報共有ができます。訪問看護師が体調の変化を記録し、介護職が日々のケアに活かすといった流れがスムーズになります。情報の見える化を進めることで、チーム全体での意識統一がしやすくなります。問題点としては医師の使うツールがバラバラなので関わっている医療機関がお多ければ多いほど情報共有しましたのでアプリみてくださいというアナログな連絡がないと、ICTの更新は情報共有のためではなくて自分自身の覚書になってしまうところ・・。
今でもFAX,電話での連絡が業界を占めているのはそのせいかも・・。
3. 家族を含めた連携
家族もチームの一員として関わることで、介護の方針が統一され、安心した在宅生活が送れます。ケアマネジャーや看護師が家族に介護のポイントを伝えることで、適切なケアが可能になります。家族が介護の方法を学ぶことで、より安心したサポートができるようになります。しかし、近年の問題としては家族が働いている、もしくは別居のため平日に顔を出せず顔を合わせたことのない家族が増えているということ。
かなり増えてきています。我々としてはノートに状況とお願い事を書いておくしかできないので介護の方法を伝えきれておらず、不安の中自己流で介護されている家族が多くなっています。不安があったり手順や技術を直接支援者と話す機会を持てるとコミュニケーションが取れて安心した介護につながります。
連携を強化するためのポイント
1. 役割分担を明確にする
それぞれの専門職が担う役割を明確にし、適切に連携することが重要です。例えば、医療面は主治医や訪問看護師が、日常生活支援は介護職が担当するといったように、役割を分けることでスムーズな支援が可能になります。
2. 互いの専門性を尊重する
多職種が連携するには、互いの専門性を尊重し、情報を共有することが欠かせません。例えば、リハビリ職が食事の姿勢をアドバイスし、介護職が実践することで、食事動作の向上につながります。
3. 相互尊敬と横の関係を意識したチーム作り
多職種が円滑に連携するためには、アドラー心理学の考え方を活かし、相互尊敬の姿勢を持つことが重要です。上下関係ではなく「横の関係」を意識し、互いを対等なパートナーとして尊重することで、より良い協力体制が築けます。例えば、「自分の意見を大切にしつつ、相手の意見にも耳を傾ける」という姿勢を持つことで、チームの結束力が高まり、利用者へのケアの質も向上します。
また、チームのメンバーが「共同体感覚」を持つことも大切です。「自分はこのチームの一員であり、他者の役に立っている」という実感が、やりがいにつながります。お互いを尊重し合う関係を築くことで、職種の違いを超えた協力体制が生まれ、利用者や家族にとってより良い在宅介護が実現できます。
まとめ
在宅介護は、一つの職種だけでは支えきれない場面が多く、多職種の連携が不可欠です。介護職、看護師、ケアマネジャー、主治医、リハビリ職などが協力することで、利用者やご家族が希望する在宅生活を続けやすくなります。連携を強化するためには、情報共有の工夫や、相談しやすい関係性の構築が重要です。
特に、アドラー心理学の「相互尊敬」「横の関係」を意識することで、より協力しやすい環境が整います。多職種が信頼し合い、共に支え合うことで、利用者にとって最適な介護が提供できるでしょう。
多職種が協力し、チームとして支えることで、在宅介護の質が向上し、ご本人やご家族が安心して過ごせる環境をつくることができます。今後も、よりよい在宅介護の実現に向けて、多職種の連携を深めていきましょう。